トウガラシ(唐辛子/고추)

更新日:2013年03月30日(土)


tougarashi

ナス科トウガラシ属の栽培種の果実から得られる辛味のある香辛料。野生種を含むこともある。

果実は緑のままでも食べることが出来る。一般に、緑色のものは青唐辛子、熟した赤いものは赤唐辛子と呼ばれる。

広義には辛味があり香辛料として使われる品種と、辛味がないかほとんどない代わりに糖度が高く、主に野菜として食される品種(甘唐辛子)も含む。ただし、パプリカには辛いものもあり、乾燥させて香辛料としても使われる。また、ししとうには1割くらいの割合で辛味があるものが混ざっている。

  • 香辛料 – 鷹の爪、本鷹、三鷹、八房、ハラペーニョ、スーパーチリ、カイエンペッパー、エスプレットなど
  • 野菜 – ピーマン、パプリカ、ししとう、弘前在来トウガラシ、伏見唐辛子、万願寺唐辛子など

メキシコが原産。現在、唐辛子を栽培している国は温帯から亜熱帯にかけて広い地域に分布している。花の色は、白、まれに紫。

主な栽培品種は下記の通り。

  • コトウガラシ
  • トウガラシ(狭義)
  • ホシトウトウガラシ(チェリーペッパー)
  • ゴシキトウガラシ(タバスコペッパー)
  • ヤツブサ(八房、レッドクラスターペッパー)
  • ピーマン(シシトウガラシ)
  • ナガミトウガラシ(ロングペッパー)
  • ムラサキトウガラシ
  •  タカノツメ(鷹の爪)

その他、パプリカやホンタカ(本鷹)、ハラペーニョ、バスク地方のピマンデスペレット等もある。

「唐辛子」は「唐」から伝わった「辛子」の意味である。ただし歴史的には、この「唐」は漠然と「外国」を指す語とされる。同様に南蛮辛子(なんばんがらし)や、それを略した南蛮という呼び方もある。

九州の一部では唐辛子を「胡椒」と呼ぶことがある(「柚子胡椒」の「胡椒」も唐辛子のことである)。これは南蛮胡椒、または後述する高麗胡椒の略と思われる。一説には大陸(唐土)との交易で潤っていた地域では「唐枯らし」に音が通ずる「トウガラシ」の呼び名を避けたためといわれる。また他地域で言うところの「胡椒」を、区別のため「洋胡椒」と呼ぶことがある。

英語では「レッド・ペッパー(red pepper)」と言う。胡椒とは関係が無いにも関わらず「ペッパー」と呼ばれている理由は、ヨーロッパに唐辛子を伝来させたクリストファー・コロンブスがインドと勘違いしてアメリカ大陸に到達した際、唐辛子をインドで栽培されている胡椒の一種と見なしたためである。それ以来、トウガラシ属の実は全て「ペッパー」と呼ばれるようになった。

日本への伝来は、1542年にポルトガル人宣教師が大友義鎮(よししげ-出家後に宗麟〔そうりん〕と称す)に献上したとの記録があるが諸説ある。南蛮胡椒と呼ばれていたのはこのためであるとされる。日本に伝来した初期は食用として用いられず、観賞用や毒薬、足袋のつま先に入れて霜焼け止めとして用いられた。

栄養分・効能・効果

胡椒などの他の香辛料と同様、料理に辛みをつけるために使われる。また、健胃薬、凍瘡・凍傷の治療、育毛など薬としても利用されているようだ。

ビタミンAとビタミンCが豊富なことから、夏バテの防止に効果が高いとされ、また殺菌作用があり食中毒を防ぐとも言われるので、特に暑い地域で多く使われている。

しかし量をあまり食べられない食材であるため、栄養素の効果より、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンの薬効に期待が集まる。

とうがらしを食べると体が温まるのは、カプサイシンが毛細血管の血液循環を良くするため。カプサイシンは、胃液の分泌を促し、たんぱく質の消化を助ける役目も持っていると言われている。

また、とうがらしは、皮下脂肪の代謝を促すので、肥満防止にも役立つことで知られています。
カプサイシンには塩分の摂取感覚を増強させる働きがあり、少ない塩分でも十分に満足できるようになります。
よってとうがらしををうまく使えば、塩分の摂り過ぎを防ぎ、高血圧予防などの健康維持にも役立つことが期待されている。

さらにカプサイシンには、血液中の好中球(白血球の一部)という組織の働きを通常の約3倍も良くするということも分かってきており、免疫力を高める作用もあると言われている。
反対に、消化性潰瘍、心臓病、慢性下痢、手術後などはとうがらしの刺激が適さない為、健康状態にあわせて摂取する必要がある。

殺菌のほかに除虫の効果もあり、園芸では他の作物と共に植えて虫害を減らす目的で栽培されたり、食物の保存に利用される事もある。果実を鑑賞するためのトウガラシの品種もある。

生のまま食べる場合と、乾燥した後に使う場合とがある。チポトレのように燻煙してから使う場合もある。生の緑色の唐辛子の方が身体には良いという意見もある。カプサイシンの辛さは刺激が強く人により好みがある。また食べたあと胃腸に問題を起こすことも少ない。ただし日本で料理に唐辛子が多く使われるようになったのは比較的最近のことである。1980年代以降、エスニック料理が浸透し、「激辛ブーム」などが起こる以前は、薬味や香り付けに一味唐辛子や日本特有の七味唐辛子が少量使われる程度であったし、市販のカレーでさえ現在ほど辛口の商品が多くはなかった。今も年配の層には唐辛子の辛味を苦手とする人は多い。

唐辛子の過剰摂取と発癌の関連性が指摘されており、唐辛子を多く摂る国は胃癌や食道癌の発癌率が高いといわれている。

味の特徴

一般的に日本国内で入手できる青唐辛子は生のものを加熱することで辛味が甘味に変化し、乾燥した唐辛子では加熱すると辛味が増す傾向にある。

辛味成分カプサイシンは種子の付く胎座に最も多く含まれる。トウガラシは胎座でカプサイシンを作り出している。トウガラシの種子にはカプサイシンがほとんど含まれていないため、種子だけを食べるとまったく辛味を感じない。カプサイシンは果皮にも含まれるが、胎座ほど多くない。

ししとうなどの甘い品種は辛い品種と交配が可能であり、甘い品種を母、辛い品種を父として交配した場合、親の世代に属する果肉は辛くなくても、辛い品種からの遺伝のため種子が辛くなることがある。しかし上記の通りトウガラシの種子にはカプサイシンがほとんど含まれていないため、種子だけを食べるとまったく辛味を感じない。辛い品種と甘い品種を植えるときはなるべく距離を置くように注意することが必要である。

調理例

唐辛子を利用した食品

  • 七味唐辛子
  • 一味唐辛子
  • かんずり(新潟県妙高市で作られる調味料)
  • 柚子胡椒(九州)
  • コーレーグス(沖縄県)
  • キムチ(韓国、北朝鮮)
  • コチュジャン(韓国、北朝鮮)
  • 豆板醤
  • 辣椒醤(ラージャオジャン)
  • ラー油
  • チリパウダー
  • チリソース
  • ホットソース
  • ハリッサ(アリサ、アリッサとも言う。北アフリカ・マグリブ地方の調味料。マグリブはフランスの植民地であったため、フランス語でHの発音が黙字化することによりアリサの別名がある)
  • 何種類かのサルサ
  • ペッパーソース(商品名としてタバスコなど)
  • 唐辛子飲料: 唐辛子を漬けた飲料としてセラノペッパー種を用いたチリビールなどの唐辛子ビール、薬用酒としても利用されるペルツォフカなどの唐辛子ウォッカなどがある。

その他

<朝鮮への伝来に関する諸説>

1613年の朝鮮文禄『芝峰縲絏』には「倭国から来た南蛮椒には強い毒が有る」と書かれ、1614年の『芝峰類説』では「南蛮椒には大毒があり、倭国からはじめてきたので、俗に倭芥子(倭辛子)というが、近ごろこれを植えているのを見かける」と書かれており、イ・ソンウが『高麗以前の韓国食生活史研究』(1978年)にて日本からの伝来説を示して以降、それが日韓共に通説となっている。伝来理由としては朝鮮出兵のときに武器(目潰しや毒薬)または血流増進作用による凍傷予防薬として日本からの兵(加藤清正)が持ち込んだのではないかとも言われている。『花譜』や『大和本草』(貝原益軒著)などには「昔は日本に無く、秀吉公の朝鮮伐の時、彼の国より種子を取り来る故に俗に高麗胡椒と云う」などと朝鮮から渡来したことが書かれている。これは一見相反するが、日本に唐辛子が伝わった当初は日本国内ではあまり広まらなかったまま、朝鮮に伝来し、その後日本国内でも広まったためではないか、と解釈されている。

一方で1460年に発刊された『食療纂要』にチョジャン(椒醤)という単語があるとし、それがコチュジャンを意味するもので、日本伝来の唐辛子とは違う韓国固有の唐辛子はすでにあったと主張する韓国の研究者も存在する。しかし、1670年の料理書『飲食知味方』に出てくる数多くのキムチにも唐辛子を使用したものは一つも見られず、 韓国の食品に唐辛子を使用した記録が19世紀に少し出てくる程度であることから疑問の声もあがっている。

<唐辛子の秘密>

トウガラシで一番辛いのは、種でも果皮でもなく、実の付け根から伸びる種子がついた中心部分、胎座(たいざ)と呼ばれるところ。トウガラシは、この胎座で辛味成分を作っている。

人間以外の哺乳類は辛い食材を食べることはなく、逆に鳥類はどんなに辛いものでも食することができると言われている。これは、鳥類の持っているカプサイシン受容体が、哺乳類が持つ受容体と異なるため、辛さに対して鈍感であることが理由となっている。さらに、トウガラシは哺乳類に実を食べられると、種子を砕かれて消化されてしまうことがあるが、鳥類は種子を丸のみするためほとんど消化されず、フンから種子がそのまま出る。このことから、トウガラシは鳥類にだけ食べてもらうように、独自の辛み成分、カプサイシンを作り出したと言われている。

人の中でも、辛さを好む人と苦手な人がいるが、日常的に辛い料理を食べ慣れていると、体が順応しあまり辛さを感じないと言われている。辛い物を日常的に口にするタイ人と、辛い物が苦手な日本人で比較すると、辛い物を食べた時の舌の様子と体温の計測では、日本人もタイ人も舌が腫れ、体温が上がり、同じように反応する。一方で、辛いカレーを口に入れた時の脳の反応は、まったく異なり、日本人はカレーが入った瞬間から脳梁(のうりょう)という部分が活発に活動し、パニック状態になるが、一方、タイ人の脳は、カレーが口に入っても少し反応しただけだったそう。このことからも、辛い料理を食べ慣れていると、体が順応することが分かる。また、辛いものを食べ続けると、クセになるとも言われている。


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