コンブ(昆布/다시마)

更新日:2013年03月31日(日)


konbu

コンブは、不等毛植物門褐藻綱コンブ目コンブ科に属する海藻である。食品として指す場合などには「昆布」や「こんぶ」の表記が好まれる。生物学的には和名として「コンブ」を用いるが、正確には「コンブ」という種は存在せず、マコンブやリシリコンブ、ミツイシコンブなどのように、コンブ科植物の種を標準和名として用いる。

コンブ科には多くの属があり、マコンブなどが属するコンブ属をはじめ、ガゴメなどが属するトロロコンブ属などがある。さらに、同じコンブ目に属する近縁なものとしては、ワカメなどが属するアイヌワカメ科や、コンブの原始的な形といわれるツルモ科などがある。

昆布の歴史は、三管領の一家に数えられた源氏の細川氏が、元海賊であった水軍の舟で京都に持ち込んだとされる。日本の歴史的な文献に初めて登場するのは続日本紀(797年)である。描写によると、当時の東北では昆布を献上品として収めていた。それにともない日本海沿岸の酒田港や後に下関を経由して大阪の重要な港に出荷されることになる。平安時代の延喜式(927年)では、コンブは租税として扱われている。

さらに江戸時代に蝦夷地(北海道)の開発が盛んになると、北前船などの航路の整備、出荷量の増加などにより全国に広まっていく事になる。とりわけ琉球王朝時代に昆布を中国への朝貢品の主要産物としていて、朝貢には適さない半端モノや下等級品をやむなく工夫して自家消費したことから、のちに伝統料理化する沖縄料理にはよく用いられる。

 

日本のコンブ生産量は約12万トン(2005年度 生重量)。生産量全体に占める養殖物の割合は約35パーセント(2005年度)。天然物の生産量の95パーセント以上を北海道が占め、特に真昆布、羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布(三石昆布)、長昆布が知られ、先頭のものほど高級品として知られる。また、中国でも80万トン前後が養殖されている。

北海道の函館市沿岸ではマコンブの養殖が盛んに行われている。マコンブは2年生のため、その養殖には2年の時間と手間が必要であり、2年栽培のものに近い質を目指した1年の促成栽培もある。また、産業上重要種であるミツイシコンブ、リシリコンブ、オニコンブに関しても、その養殖法は確立されている。その他の種に関しては天然の現存量が多い、もしくは前述の種より利用価値が低いことから、養殖法が確立されていない。

コンブの収穫は、小舟から昆布の根元に竿を差し入れねじり取る。海岸で押し寄せてきたコンブを拾ったり、鈎でたぐり寄せる方法もある。次に、小石を敷き詰めた干場に運び並べて干す。1~2回裏返しにし、まんべんなく乾燥させる。乾燥しすぎると折れやすくなるため加減が必要である。乾燥時間は半日程度だが、この間に雨に当たると商品価値はなくなるので、天気予報で雨が確実な日は出漁を見合わせることもある。天日ではなく乾燥機で干す方法もあり、品質は落ちるが、濃霧や日照不足などの理由で乾燥機の使用頻度が多い地域もある。

種類

  • マコンブ (真昆布)

主に津軽海峡~噴火湾沿岸で獲れる道南産のコンブ。非常に多くの銘柄と格付があり、旧南茅部町周辺(現在は函館市)に産する真昆布が最高級品とされ、「白口浜」という銘柄で呼ばれる。そのほか旧恵山町周辺で産する黒口浜、津軽海峡の本場折、それ以外の海域で取れたものを場違折などの銘柄に分ける。市場価値もおおよそこの順番となるが、銘柄内でも品質により数段階の等級に分けられる。だし汁は上品で透き通っていて、独特の甘味がある。大阪ではこの味が好まれ、だし昆布といえば、大抵この真昆布を用いる。また、他の用途としておぼろ昆布、白髪昆布など薄く削った加工品がある。

  • オニコンブ(羅臼昆布)

真昆布と並ぶ昆布の最高級品である。濃厚な味のため、関東地方ではだし昆布として、この羅臼昆布が好まれる。北陸の富山などは一大消費地である。 

  • リシリコンブ (利尻昆布)

真昆布や羅臼昆布に次ぐ高級品で、味は前者より薄いが、澄んでおり、やや塩気のある、上品なだしが採れる。そのため、懐石料理では重宝され、とりわけ京料理には欠かせない。京都では最も一般的なだし昆布である。

  • ホソメコンブ(細目昆布)

渡島半島の松前~道北の留萌を主体とした日本海沿岸で獲れる昆布。ほかの昆布と異なり寿命が1年であるため、1年目で刈り取られる。切り口がどの昆布よりも白いために、おぼろ昆布、とろろ昆布に加工されることが多い。以上の4種は分布域が連続しており、遺伝的距離も非常に近く種間交雑が可能である。

  • ミツイシコンブ (日高昆布、三石昆布)

太平洋岸、日高地方で獲れる。早く煮え、非常に柔らかくなるので、昆布巻き、佃煮、おでん種など、昆布そのものを食べる料理に適している。

  • ナガコンブ (長昆布、浜中昆布)

釧路地方で多く獲れるコンブ。全長15mにも及ぶ。生産量は最も多いが、旨味成分が少ないために一般向けの廉価品。だが、沖縄県周辺では古くから野菜代わりに重宝され、最も一般的な昆布である。日高昆布同様、柔らかいために一般では昆布巻きなどに用いられるが、切り刻んだものをそのままサラダ感覚で食べたりするほか、豚肉との相性が非常に良いため、炒め物にしたりする。ミツイシコンブと遺伝的距離が近く、本種をミツイシコンブの変種とする説もある。

  • ガゴメ (籠目昆布)

葉(正確には葉状部という)の表面に籠の編み目のような龍紋状凹凸紋様があることからこの名を持つ。北海道函館市の津軽海峡沿岸~亀田半島沿岸(旧南茅部町)~室蘭市周辺(噴火湾を除く)、青森県三厩~岩屋、岩手県宮古市重茂、樺太南西部、沿海州、朝鮮半島東北部に生育する。水深10~25mに多く分布し、浅い側ではマコンブと混じって分布するため、昔は雑海藻とみなされていた。最大で長さ2mほどになり、寿命は3年から5年と考えられている。ダシを取る用途には使われず、商品価値が低かったが、「フコイダン」という粘性多糖類が他のコンブよりも多量に含まれ、それがいわゆる機能性成分として作用するらしいことが分かり、価格が急騰した。これまではもっぱら天然に分布するものが採取されていたが、生産量は一時期の10分の1まで落ち込んだ。

栄養分・効能・効果

昆布は特に豊富な食物繊維や鉄分、カルシウムなどが含まれており健康食品として人気が高い。池田菊苗が1908年古来から使われる昆布の旨み成分がグルタミン酸であることを発見し、これがうま味調味料の味の素となった。他にも、昆布には人にとって必須元素であるヨウ素を多量に含有している。(※ヨウ素を多量に含む昆布を過剰に摂取すると甲状腺の機能障害を起こす場合があるとされる為注意も必要。)

また、昆布の表面の白い粉は、汚れやカビではなく、マンニットという甘味のある炭水化物の一種で、使用する時は固く絞った塗れ布巾で表面をふく程度にすると良い。

 

昆布の健康効果

昆布(こんぶ)には、様々な海洋ミネラル成分が豊富に含まれている。 昆布に含まれるヨウ素は海藻類の中で最も多く、ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料になり、基礎代謝を活発にしたり、交感神経に作用してたんぱく質や脂質・糖質の代謝を促進する働きがあるとされる。

また、水溶性の食物繊維であるアルギン酸が昆布には多く含まれており、大腸の働きを活発にして便通を促す働きがあると言われている。便通が順調になることによって、コレステロールや腸内の有害物質が体外に排出され、大腸がん・動脈硬化などの病気の予防に効果が期待される。さらに昆布のヌルヌルに含まれる成分で、多糖類のひとつであるフコダインは、内臓に効果的に働きかける栄養素として、近年注目されている。
フコダインは、胃の炎症や潰瘍の予防・修復をする働きや、肝機能の向上、がん細胞を死滅させる効果があり、がんの発生・進行を抑える作用があるとされ、また、体内のリンパ球を活性化させ免疫を向上、滋養強壮にも効果があるようだ。

ほかにも昆布のうまみ成分で、脳の機能を活性化させ、ボケや痴呆の予防効果があるアミノ酸の一種であるグルタミン酸、骨や歯を丈夫にするカルシウムや、むくみを改善し高血圧を予防する効果があるカリウム、ビタミン類など、昆布には人体に有益な栄養素が豊富にバランス良く含まれている。昆布は豊富な海洋・栄養成分を持ちながら極めて低カロリーな食材であり、健康に気を遣う方や、ダイエット中の方、肌を若々しく保ちたい方、頭髪の健康にぜひお勧めしたい食材である。

調理例

  • 乾物
  • 昆布茶(こぶ茶)
  • 松前漬け
  • 松前昆布
  • 昆布〆め
  • とろろ昆布
  • 鰊の昆布巻き

その他

-上方食文化における昆布-

湿気の多い大阪で乾燥させた昆布を倉庫に寝かせておくと、熟成することで昆布の渋みが無くなり甘みがでてくる。大阪に昆布が広まったのは商用船が日本海航路を通って下関経由で大阪に運ばれるようになってからである。安土桃山時代に農・乾物の一大集積地であった大阪は多湿な気候が乾物や昆布の旨味を熟成させたことから、江戸時代になると真昆布のダシを特徴とした食べ物は「大阪の食い倒れ」として有名になってきた。

大阪の農産物と交換に蝦夷から運ばれた乾物は、昆布のほか、帆立貝、棒だら、身欠きにしんなどがある。主に商用船は太平洋側を避けて日本海航路で運ばれるようになったことから、大阪より敦賀や小浜で昆布の消費が多くなっている。

また刃物の街である堺の職人により、乾燥昆布を甘酢に浸し表面を削った「おぼろ昆布」が生まれた。昆布表面の黒い部分は甘酢がよく染みていることから、酸味が多い黒い「おぼろ昆布」(黒おぼろ)になる。中でも表面を薄く削ってゆくと、内側の白い部分が出てくる。ここは酢に浸っておらず、昆布本来の甘みがある。この昆布は「太白おぼろ」と呼ばれる。最後に残った昆布の芯の部分はばってら寿司や押しすしに使われるばってら昆布(白板昆布)になる。薄く削るには職人による高等技術が必要とされる。

上記の堺でも「おぼろ昆布」が発達し、また北前船の集積地でもある敦賀でも「おぼろ昆布」技術が発達した。おぼろを削ったヘタの部分は爪昆布と呼ばれ、お菓子として食べられることがある。また、爪昆布は煮込むとコンブ特有の粘りが強く出ることから、煮物などの調理の際に煮汁とともに入れ、その粘りを利用して表面に浮いた灰汁取りを容易にするといった使い方もなされる。その他昆布の加工品といえば、塩昆布(日高昆布)が連想されるが、戦国時代の出陣の際、勝ち栗や喜ぶなどの縁起を担いだ出陣式に醤油で炊かれた塩昆布は細目昆布を醤油で煮込んだものと思われる。

醤油で炊かれた塩昆布を火鉢の網の上に並べて乾燥させては醤油につけ、網の上で3回乾燥させたものを「汐吹き昆布」といった。粉が表面に吹いているように見えるが、これは昆布のうまみ成分が結晶化したものである。現在では、イノシン酸や昆布のグルタミン成分などの調味料をまぶす場合もある。


関連キーワード

,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,

カドヤ Facebookページ