ニンニク(大蒜 /마늘)

更新日:2013年03月31日(日)


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ネギ科(クロンキスト体系以前の分類法ではユリ科)の多年草で、球根(鱗茎)を香辛料として用いる。日本ではニンニクやノビル(野蒜)など根茎を食用とする臭いの強い(ネギ属の)植物を総称して蒜(ひる)と呼んでいたが、特にノビルと区別する場合にはオオヒル(大蒜)とも称した。生薬名は大蒜(たいさん)。

原産地は中央アジアと推定されるが、すでに紀元前3200年頃には古代エジプトなどで栽培・利用されていた。また、現存する最古の医学書『エーベルス・パピルス』には薬としても記載されている。中国には紀元前140年頃伝わり、日本には中国を経て8世紀頃には伝わっていたと見られる。日本では禅宗で「不許葷酒入山門」とされたように、強壮作用が煩悩(淫欲)を増長するとされて仏教の僧侶の間ではニラ、ネギ等とともに五辛の1つとして食が禁じられた。漢字表記の「蒜」「大蒜」は漢語に由来する一方、仏教用語の「忍辱(にんにく…困難を耐え忍ぶという意味)」がニンニクの語源となったとされる。

生産量としては、日本国内では青森県産が80%を占め、田子町(たっこまち)は「ニンニクの町」としてPRしている。次いで香川県も出荷が多い。特に青森産ニンニクはブランド化しており、中国産の輸入ニンニクはそれに比べて安価である。

栄養分・効能・効果

ニンニクは滋養強壮の効果があるといわれ、栄養ドリンクや健康食品にも使われているが、ヒトでの有効性について信頼できるデータは十分でない。生のニンニクの強烈な香りと辛味は、刺激が強過ぎて胃壁などを痛める場合があるが、この症状もアリインの影響といわれる。

 

ニンニクの健康効果

ニンニクには、ビタミン・ミネラル類のほか、アリシンとスコルジニンという成分が含まれている。ニンニクに含まれているスコルジニンは、体内の栄養素を燃焼させてエネルギーに変える働きがあり、疲労を防止するビタミンB1の働きを高める作用もあるので、体に精をつけ更年期特有の倦怠感を取り除くのに大変効果があるとされている。一方ニンニクに含まれているアリシンは胃腸の働きを促進する作用があり、食欲不振の解消に絶大なる効果が期待されている。

また、ニンニクには深刻な冷え性、不眠症にもスコルジニンが作用し解消する作用もあると言われる。毎日、生のニンニクなら一片、加熱したニンニクなら2~3片ずつ食べるのがお勧めである。

経口摂取で有効性が示唆されているのは、高脂血症、高血圧、おそらく加齢に伴う血管の弾力性の減少抑制、大腸がん、胃がん、前立腺がんの予防である。

味の特徴

<臭> ニンニクのある種の細胞には、アリインという無臭の化合物が含まれる。一方、ニンニクの別の細胞にはアリナーゼという酵素が含まれる。ニンニクを切るとこれら細胞が壊れ、アリイナーゼとアリインは細胞外に出てお互いに接触する。アリイナーゼの作用によりアリインはアリシンに変化する。そのアリシンがニンニクの独特な臭いのもとである。

なお近年、エジプト産のニンニクをもとにした品種改良の結果、臭いが少ない「無臭ニンニク」も流通している。

調理例

中国料理では、球根のみならず葉や茎(いわゆる「ニンニクの芽」)も香味野菜として利用される。その他イタリア料理、フランス料理、韓国料理など、さまざまな料理に用いられる。

香味野菜の代名詞的存在といえ、料理に食欲をそそる香味を付与する。また、畜肉のくせをごまかす効果も重宝されている。

中華料理・イタリア料理などでは、油が冷たいうちにニンニクのみじん切りを入れて弱火で炒めるのがコツである。火が強すぎるとすぐに焦げる。

皮をむいたニンニクの球根を乾燥させ、粉末状にした「ガーリックパウダー」もある。乾燥させることで生よりもにおいの成分を抑えられることもあり、ガーリックトーストをはじめとする各種料理に用いられている。ガーリックパウダーは吸湿性が高く、開封後は乾燥状態を保持できる環境で保管する必要がある。逆に、わざと少量の水分を加えておろしニンニク代わりに使う例もある。

その他

ニンニクを摺り下ろすと、稀に青くなることがある。これはクロロフィルの色であり、体に影響はないとされている。また醤油や焼酎に漬けた場合も青くなることがあるが同じ理由による。ニンニクは通常休眠状態で流通されるが、保管状態が悪い(野積みした場合など)と芽だし寸前の状態になり、この状態で摺り下ろすと光に反応してクロロフィルが生成され、これが青く見える。


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