更新日:2013年06月02日(日)
マダラ:대구(大口)/ Pacific cod スケトウダラ:명태/Alaska pollock (メンタイスープは북어)
タラ(鱈、大口魚)は、タラ目・タラ科に分類される魚の総称。おもに寒冷地域の海に分布する底生の肉食魚で、重要な水産資源となる魚を多く含む。
肉食動物で、多毛類、貝類、頭足類、小魚など、いろいろな小動物を捕食する。自分の体の半分くらいの動物にも襲いかかり、大きな口で捕食してしまう。非常に貪欲なことから、腹いっぱい食べるという意味の副詞「たらふく(鱈腹)」の語源となったといわれている。しかし本当の語源は「足(た)らい脹(ふく)くるる」で「満足して(腹が)脹れる」という意味であり、「鱈腹」は当て字である。タラを解剖すると少なからぬ胃潰瘍の病巣が認められ、これがこの過食によるものだとする説がある。
タラ類は傷みが早く、生の状態では冷蔵しても品質が悪化することが知られている。「タラは船の上で食え」という言葉さえある。これは酵素活性が低下する低温の環境に生息するため、多量の酵素を持つことで酵素活性の低さを補っていることが原因である。死後は多量の酵素によって自己融解が進み、急速に傷んでしまう。
マダラやスケトウダラの胃を唐辛子などの香辛料、砂糖、塩などに漬け込んだものをチャンジャといい、コリコリとした食感を楽しむ。もとは韓国の食材だが日本でも売られるようになった。
○産地・種類:
日本では北日本沿岸にマダラ、スケトウダラ、コマイの3属3種が分布する。単に「タラ」と呼んだ場合はマダラを指すことが多い。
マダラ
全長は1mを超える。上顎が下顎より前に出ていて、体側にまだら模様がある。また、頭身が小さく、腹部が大きく膨らむ。
タイセイヨウダラ
全長2mほどに達する大型種。北大西洋に分布する。
スケトウダラ
スケソウダラともいう。全長70cmほど。下顎が上顎より前に出ていて、体側には褐色の縦帯模様がある。マダラに比べて体が細長い。
一般にスケソあるいはスケソウとも呼ばれ、その名の由来には諸説があるが、一説に、佐渡の近海で多くとれることから、「佐・渡」を「スケ・ト」と読み替えたことからこの名が生まれたという。地方によりさまざまな呼び名があり、新潟県でスケトウ・ナツトオダラ・ヨイダラ、富山県でキジダラ・キダラ・シラミダラなどと呼ばれるほか、メンタイ・ミンタイなどと呼ぶ地域もあり、「明太子(めんたいこ)」の名はここから来ている。また、2-3歳くらいの未成魚をピンスケ、それより小さいものをマゴスケなどと呼び分けることもある。
コマイ
全長30cmほど。上顎が下顎より前に出る。また、下顎のひげが短い。
○栄養分・効能・効果:
タラ(鱈)は、タラ目タラ科に分類される魚の総称で、高たんぱく、低脂肪の代表的な白身魚です。その他の栄養成分は、ビタミンやミネラル、タウリン、グルタチオン、肝臓には、ビタミンAやDが豊富に含まれています。グルタチオンは、抗酸化作用で細胞の老化を抑制したり、肝臓の機能を高める効果などが期待されます。
●淡白な味の鱈は脂質は少ないため老人食や離乳食に向いています。
●ビタミンA、D、Eは白身魚にしては多いです。ビタミンDは、体内でカルシウムとリンの吸収を高め、血中でカルシウムとリンのバランスを調節してくれます。その為、骨粗鬆症や虫歯を防ぐはたらきがあります。
●たらこにはパントテン酸が多く含まれ、若さを保つはたらきがあります。
●たらこは亜鉛を多く含みます。亜鉛が不足すると免疫機能の低下や味覚異常などの症状として現れたりもしますので、とても重要な元素です。
●粘膜の保持、夜盲症などに効果
他の魚類に少ないビタミンA・Dが豊富です。ビタミンAは視力の維持や皮膚や粘膜の健康に。ビタミンDは骨や歯を丈夫にするのに欠かせない栄養素です。
●冷え性、風邪予防など
身は低脂肪・高蛋白で、胃腸を温め、血行をよくし、冷え性・風邪予防・体力のない人など、冬場にピッタリの食材です。
●夜盲症などに
たらの肝臓はビタミンAとDの宝庫で、昔から夜盲症や結核、虫下しの薬として珍重されてきました。
●骨粗鬆症予防に
白子にはビタミンDが非常に多く含まれています。ビタミンDの役割はカルシウムの吸収の補助で、いくらカルシウムをたくさん摂取してもビタミンDが不足していると吸収効率が悪くなってしまいます。人間はビタミンDを日光浴により体内で合成できるのですが、寒い時期には日光浴もままならないので、食べ物でしっかり摂取しましょう。
●味覚障害に
たらこには、ナトリウムが多いという欠点はありますが、亜鉛を極めて多量に含むので味覚異常や不妊症に効果があります
○旬・季節:
産卵期は冬から早春にかけてで、分離沈性卵を産卵し、卵は海中を漂いながら発生する。タラ類の一度の産卵数は数十万-数百万個に及び、魚類の中でも多産の部類だが、親魚は卵を保護せず、成長の途中でほとんどが他の動物に食べられてしまうので、生き残るのはごくわずかである。
○調理例:
身は脂肪が少なく柔らかい白身で、鱈ちりなどの鍋料理や、棒鱈などの干物、バカラオなどの塩蔵品、かまぼこおよび魚肉ソーセージなどの魚肉練り製品などに利用される。身のほかにも肝臓は肝油を採取するほか、オイル漬けにしたものはコッドレバーとして缶詰とされる。また、スケトウダラの卵巣(たらこ)、マダラの精巣(白子)、胃(韓国料理の食材チャンジャ)なども食材として珍重される。
棒鱈(ぼうだら)
とは、日本のマダラの干物のこと。日持ちしないタラを流通させるために、古くから加工されてきた保存食である。主に煮物に用いられ、ほろほろとした食感と独特の風味に特徴がある。干鱈(ひだら)とも呼ぶ。北欧でもよく似た見た目のタラの干物が作られており、中でも塩漬け干物は輸出先のポルトガルやスペインのバスク地方などではバカラオと呼ばれている。
江戸時代以前から、東北・北海道地方における海産物を使った保存食の代表格として製造が行われてきた。加工された棒鱈は北前船で関西方面に運ばれ、正月料理やお盆料理の一品として食べられた。東北地方の山間部では夏の保存食としても、また北九州では夏の祭に食べる習慣がある。
マダラ(スケトウダラを使う場合もある)を三枚におろし頭と背を取り去ってから洗い、塩も振らずに1~2ヶ月程度天日干しで乾燥加工をする。主に12月から2月までの間に製造される。完全に乾燥したものは極端に身が硬くなり文字通り棒状になる。
非常に硬いため、そのままでは食べることが出来ないが、金槌等で叩いて身をほぐし、酒の肴にすることはできる。
一般的には何日も掛け水に浸し水を取り替えながら戻し、あく抜きをする必要がある。十分に柔らかくなってから、芋などと炊き合わせたり、うま煮・甘露煮・煮魚等に加工される。海老芋と炊き合わせた芋棒は、伝統的な京料理として知られる。棒鱈と芋の煮物を河原などで作って食べる風習が、芋煮会の起源とも言われる。
日田など九州の山間部では棒鱈の内臓部分を『タラの胃』若しくは『たらおさ』と称して煮付けにしてハレの日のご馳走にしている。一説では、棒鱈を売る際にこれらの地域に入る頃には身は全て売れてしまい内臓と骨だけになってしまっていたから、と言うのが由来とされる。
●棒鱈の料理のこつ
乾燥させてつくられている棒鱈は、戻して使わないといけません。その戻し方の手順です。
- 棒鱈は太めのものを求めます。
- 真水に、5~7日間くらい浸します。水は毎日変えてください。
- 戻ったら、綺麗に水洗いします。腹の部分の黒い薄皮などは、この時に丁寧に取っておきます。
- 一口大に切り、多めの水で煮立てて5分ほど沸騰させたあと、火を消します。
- そのまましばらく冷ました後、新しい水に変えて6~7時間おいておきます。この後好みの味付けをしてください。
■鱈(たら)の加工品
●棒鱈(ぼうだら)
干だらの一つで、真だらを尾をつけたまま三枚におろし、頭と腹の部分をとって天日で堅く感想させて作ります。おせち料理におなじみの棒だらは、実は北海道稚内市の特産物です。稚内地方の早春は、晴れて湿度が低く風が強い日が多いため「棒鱈」の製造に一番良い条件となっています。昔この地方で作られた「棒鱈」が遠く京都まで運ばれて、京都のお正月になくてはならないものになったようです。
●白子(しらこ)
真だらのオスの精巣。雲腸(くもわた)、雲子(くもこ)、菊子(きくこ)とも呼ばれます。鍋に入れても、焼いても、天ぷらでも、湯引きしてポン酢でも美味です。
●たらこ
すけとうだらの卵巣を塩漬けにしたものです。塩漬けたらこを赤唐辛子を使った調味料に漬けこんだものはからし明太子となります。焼いて食べたり、にぎりの具や、あつあつのご飯に非常に合います。
●かまぼこ等の練り物
元々は、はも、ひらめ、かれい等の白身魚を混ぜて作りますが、最近はすけとうだらの冷凍すり身を使用して作ることが多いため、味が均一になっています。
●チャンジャ
真だらの内蔵と身のキムチ漬けです。珍味、焼肉屋さんで良く見かけます。凄く辛いが美味しく酒の肴に最適です。
●肝油(かんゆ)
肝臓からとったの油です。ビタミンAとDが多く含まれます。
●その他
塩だら、かす漬け、干だらのほか、鯛のかわりに鯛みそや鯛でんぶにします。
○その他:
■鱈(たら)の選び方
●目が黒々と透き通っているもの、皮が光沢のあるチョコレート色をしていて張りのあるもの、えらが鮮やかな紅色をしているものを選びます。
●切り身は身に透明感があり、ほのかにピンクがかかった弾力のあるものが鮮度の良いものです。逆に身が白く不透明なもの、皮が白っぽいもの、アンモニア臭のするものは鮮度が落ちているので避けます。
●オスの方が白子があるため高価で、味も良いです。
●白子は、透明感があって身がしっかりしているものが新鮮です。身くずれしているものは鮮度が落ちています。
●たらこは、べたつかず透明感のあるもの、皮が薄く身くずれしていない大きいものを選びます。部分的に緑色をしていたり、膜が破れているものは鮮度が落ちているので避けます。
●「たら腹食う」の語源
鱈という魚は別表記で大口魚と書くぐらい、魚の中でも特に大食漢として知られています。しかも単なる大食漢ではなく、エサの種類も選ばずに何でもその胃袋に詰め込んでしまうのです。エサの代名詞のようなイワシはもちろんのこと、カニ、エビなどの甲殻類やヤドカリ、貝類といった堅いものまで、どんどん食べてしまいます。ちなみに魚ならば、自分の体長の2/3くらいの大きさのものは折りたたむようにして胃袋に入れてしまいますし、100種類もの魚介類が胃から出てきた例もあるほどです。
こんな鱈の大食ぶりと、その大きなお腹から「たら腹食う」という言葉が生まれたのですが、その大食にも理由があります。鱈は冬以外は水深150mもの深海に生息しているのでエサには恵まれず、食べられる時に腹一杯食いだめしておく必要があるからなのです。
ちなみに、鱈はその大食漢の影響か、すぐに胃潰瘍になってしまうそうです。しかし、鱈の胃潰瘍は自然に治るので、それで死んでしまうというようなことはないそうです。
●漢字で魚偏に雪の訳
魚偏に雪と書くのは、淡泊な身が雪のように白いことや、雪の降る頃に脂がのって美味しくなること、初雪の後にとれ出すため、などが理由だと言われています。ちなみに鱈の字は国字で中国語にはありません。
●明太子のメンタイって?
メンタイというのは、朝鮮語ですけとうだらのことで、そこから、唐辛子漬けのたらこを、「辛子めんたい」と呼ぶようになったそうです。